中学・高校生の野球競技人口 | プロ野球の視聴率を語るblog

中学・高校生の野球競技人口

「野球人気は下がっていない」説の一つの根拠として、「高校野球の部員数が増えている」というものがありますが、これについていくつか怪しい点がありますので指摘しておきます。

 

 

まずは高野連発表の高校野球部員数のデータ です。

H4~10年に若干へこんでいる時期があるようにも見えますが、ここ15年ほどは増え続けています。

 

「高校野球の部員数が増えているんだから野球人気に死角なし!」と考えてしまいそうですが、中学の野球部の人数を見てみると意外なことがわかります。実はなぜか、中学の野球部員数は過去10数年どんどん減っているのです。

 

中学校の野球部員数については日本中学校体育連盟 のサイトに載っています。年度ごとのリンク先しかないため、こちらでまとめました。また、比較のため年度ごとに3年後の高校野球の部員数(例えば中学のH13年→高校のH16年)と合わせて掲載します。

 

 

年度.   中学野球  3年後高校 継続率?
平成13.  321692  160801   50.0% 
平成14.  314022  165293   52.6%

平成15.  312811  166314   53.2%
平成16.  298605  168501   56.5%
平成17.  295621  169298   57.3%
平成18.  302037  169449   56.1%
平成19.  305300  168488   55.2%
平成20.  305958  166925   54.6%
平成21.  307053  168144   54.8%

平成22.  290755  167088   57.5%
平成23.  280917  170312   60.6%
平成24.  261527  (H27年)
平成25.  242290  (H28年)

 

 

中学の野球部員数はデータのあるH13年以降、徐々に減少しています。一方でなぜか高校の部員数は増えていて、そのため高校/中学の比率(継続率?)が上昇しています。

 

この数字のギャップについて、実際に継続率が上がっているということもあるかもしれませんが、それよりも「中学と高校の部員数について、集計の仕方が異なる」ことによるのではないかと言われています。

特に高校野球の部員数について、「実際の活動人数より多めに集計されている」という兆候があるので、今回はそちらを紹介します。

 

 

・女子マネージャーが含まれている

H26年高野連の都道府県別部員数を見ると 、千葉県は8035人となっています。そして千葉県高等学校野球連盟のサイト にはご丁寧に部員数の内訳が出ているのですが、

 

男子:7337人

女子:698人

計:8035人

 

となっているのですね…。つまり千葉県の野球部員数には女子マネージャーが1割程度含まれていて、実際の「競技人口」よりも多くカウントされていることになります。集計の仕方がいい加減でなければこれは全国共通と思われるため、「高校の野球部員数≠野球の競技人口」ということになります。中学の部員数は男子のみのデータなので(別に女子部員数のデータもありますがH25年で1000人程度と1%弱です)、この集計方法の違いが「中学では減っていて、高校では増えている」理由の一つとして考えられます。

 

 

・「かけもち部員」が含まれている

高校野球は部活の中で特別扱いされているため、かけもちというか他の部活から人数を集めて何とか大会に出場する、ということが広く行われているようです。

去年も野球部は5人しかいなかったためスキー部3人と帰宅部1人を加えて大会に臨んだ双葉高校の話 もありましたし、古くはベースランニングのルールを全く知らない選手の動画 とかもありました。これらの選手を「部員数」に含めても、公式戦に出ている以上まあ問題はないでしょう。とはいえ「野球の競技人口」について語るとき、基本的にかけもちのない中学の人数と、大会の時だけ人を借りてくる高校の人数とどちらが参考になるかというと、中学の方ではないかと思います。

 

 

・「野球側」からの反論

ここまで、「学生年代の野球人口は実は減っているのではないか」という話をしてきましたが、「中学の競技人口」の方が正確でないという反論もあるため紹介しておきます。

中体連の集計は、あくまで中学校の軟式野球部の部員数であるため、「リトルシニアやボーイズリーグなど、硬式野球をする中学生は増えているのではないか?」という反論が出てくることが多いです。とはいえ定量的なデータをみたことはないのと、データがあったとして団体間や部活動との重複登録がないのかなど、反論になりきれていないように思います。バシッとデータを出せる方がいましたら歓迎しますのでお待ちしています。

 

 

 

最後に一応まとめを書いておきますと、

 

高校野球の部員数が増えていると言われているが、女子マネや他の部活とのかけもち部員が多かったり、中学では野球部員が大幅に減っているため、高野連集計の部員数は競技人口を正しく反映していない可能性が高い

 

となりますかね(まとめとしては長かった)

 

ところで、まだ3年後の高校部員数が出ていないのが残念ですが、H24・25年の中学野球部員数は急激に減った感があります。H26年の部員数は例年だと9月中に発表になるので、結果が出たらまた紹介したいと思います。このまま中学が減り続け、「何らかの事情」で高校の部員数が維持され続けたとすると、十数年後には「継続率」が100%を超えるかもしれません。怪しい専門学校の「就職率」みたいですね…